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神戸地方裁判所 昭和59年(わ)154号 判決

本籍

兵庫県小野市長尾町八二二番地の一一二

住居

右同

はさみ類卸売・ビジネスホテル業

藤井修次

昭和五年二月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官糟谷道彦出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、兵庫県小野市長尾町八二二番地の一一二等において「藤井修次刃物製作所」の屋号で各種はさみ類の卸売業を営むとともに、「ジャパン」の屋号でビジネスホテルを経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和五五年分の実際の所得金額が四、三二三万〇四六一円で、これに対する所得税額が二、〇〇七万〇三〇〇円であるにもかかわらず、売上げの一部を除外し、架空旅費交通費を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、同五六年三月一四日同県加東郡社町社字若ケ谷南之上五一番地の三所在の所轄社税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の所得金額が五七六万五、五九三円で、これに対する所得税額が八三万四、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税一、九二三万六、一〇〇円を免れ

第二  昭和五六年分の実際の所得金額が五、三〇七万一、二三〇円で、これに対する所得税額が二、六三八万五、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五七年三月一二日前記社税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の所得金額が四一七万二、八二五円で、これに対する所得税額が四七万一、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税二、五九一万三、八〇〇円を免れ

第三  昭和五七年分の実際の所得金額が三、八六七万八、八七三円で、これに対する所得税額が一、七一二万一、三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五八年三月一四日前記社税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の所得金額が三七九万四、〇四六円で、これに対する所得税額が三九万七、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税一、六七二万三、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判延における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書六通

一  藤井房子の検察官に対する供述調書(三通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書

一  荒瀬剛始の検察官に対する供述調書

一  前山洋の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二〇通(記録第二〇の一号、第二〇の四号、第二〇の一一四号、第二〇の五号、第二〇の八号、第二〇の一〇号、第二〇の二〇号、第二〇の一一八号、第二〇の一七号、第二〇の二二号、第二〇の二三号、第二〇の二八号、第二〇の一一五号、第二〇の一一六号、第二〇の二一号、第二〇の三〇号、第二〇の三二号、第二〇の一一〇号、第二〇の三四号、第二〇の六四号)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(記録第一号)

一  大蔵事務官作成の所得税確定申告書謄本(記録第六号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書五通(記録第二〇の一〇一号、第二〇の二八号、第二〇の一一一号、第二〇の三二号、第二〇の七二号)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(記録第二号)

一  大蔵事務官作成の所得税確定申告書謄本(記録第七号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書七通(記録第二〇の二号、第二〇の三号、第二〇の一三号、第二〇の一〇一号、第二〇の二八号、第二〇の二一号、第二〇の三一号)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(記録第三号)

一  大蔵事務官作成の所得税確定申告書謄本(記録第八号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書三通(記録第二〇の三号、第二〇の二一号、第二〇の七二号)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、昭和五六年法律五四号附則五条により同法による改正前の所得税法二三八条一項、一二〇条一項三号に、判示第二、第三の各所為はいずれも所得税法二三八条一項、一二〇条一項三号に該当するが、判示第一の罪については改正前の所得税法二三八条一項、判示第二、第三の各罪についてはいずれも所得税法二三八条一項によりそれぞれ懲役及び罰金を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一、二〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、諸般の情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 大山隆司)

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